以前ブログでとりあげた、オパルセントガラス。
これを多用した作家に、ルネ・ラリック(1860-1945)がいます。
ジュエリーデザイナーとガラス工芸家の顔を持っていて、ジュエリーデザイナーとしてはアールヌーヴォー期に、ガラス工芸家としてはアールデコ期に作品を数多く残しています。
1900年頃のフランスには、ブシュロンやカルティエといった今でも名を残す大手宝飾店が台頭してきて、宝石を贅沢に使った宝飾品がありました。
一方、ラリックの作るものは昆虫、魚、蛇、人面と変わったモチーフも多く、素材もガラスやエナメルと多岐にわたります。
自分の好きなものを興味ある素材でつくった。そんな感じがして、宝飾デザイナーというより、ジュエリー作家と言った方がしっくりくる。
生誕150年記念展
2009年に東京、国立新美術館で生誕150年記念展が開催されました。
めったに東京へなど行かない、出不精の私が珍しく出向いた記念展なんです。
この表紙のエナメルのジュエリーがお目当てでした。(来場者のほとんどがそうだったのか、ケース前は人だかり…)
タイトルは『ケシ』。芥子(けし)いわゆる「ポピー」の花です。形態はハットピンで、1897年制作、7.5x23.5x10.5(cm)と予想より大きい。でも細工は圧巻で、おしべや花びらなど溜息ものです。金、銀、ダイアモンド、エナメル、七宝などで作られているようです。解説によれば、
1897年のフランス芸術家協会サロンにてリュクサンブール美術館のために国が買い上げ、1900年のパリ万国博覧会で人々を驚嘆させた。
とあります。
オルセー美術館所蔵品なのですが、今までラリック関係の書籍等で見かけたことなかった作品なんです。「トンボの精」「蛇」「冬景色」などは有名で、あちこちで図版を見ることができます。
このハットピン、展示のメインを張る作品なのに、なぜ表に出てこなかったのだろう。日本での知名度がないだけ?
オパルセントガラス
オパルセントガラスの作品もいくつかありました。
中でもこの花瓶は、ガラスの厚みの差を利用したレリーフが素敵でした。
諏訪ラリック美術館
この美術展よりさらに昔、長野県諏訪のラリック美術館へ行ったことがあります。
美術館ショップにオパルセントガラスのペーパーウェイトが売っていました。美術展は覚えていないのに、ペーパーウェイトは覚えている… すごく欲しかったんだと思います。たぶん高くて買えなかったんでしょうね(笑)
その後「オパルセントガラスのうさぎ」を手に入れているんですから、やっぱり諦められなかったらしい…なぜこんなにガラスに惹かれるんでしょう…
アール・ヌーヴォーそのものが、自然をモチーフにしていたり、日本の浮世絵などから影響を受けているので、ルネ・ラリックやアルフォンス・ミュシャといった作家たちは、日本人には親しみやすいのだろうと思います。ガラス工芸家のエミール・ガレも有名ですしね。
<開催情報>
生誕150年 ルネ・ラリック 華やぎのジュエリーから煌きのガラスへ
René Lalique A Retrospective
2009年6月24日〜9月7日
国立新美術館
主催:国立新美術館、東京新聞
https://www.nact.jp/exhibition_special/2009/lalique/
(この記事は、別のブログに掲載していたものを移転再編しました。)