以前、琥珀の色を記事で、サファイアブルーアンバー、ルビーレッドアンバー、カリビアングリーンアンバーの名前を出しました。その後それっぽい現物を集めつつ、琥珀の加工色についてまとめてみました。
鮮やかな色の琥珀は加工されたもの
宝石として売られているものに、人の手が入っていないものなどないのですが、素材は天然(人工合成ではないもの)で加工処理施すとして、どの程度のものなのかを知っておくと購入するときの判断材料にもなります。
宝石は装飾品として使用するため、強度や保護を目的とした処理は当然必要です。乾燥、衝撃、紫外線による退色など様々な外的要因があるからです。さらに、傷を目立たなくする、クリアにする、色を安定させて鮮やかにする等々も通常行われています。
宝石の状態を良くする通常の加工の他に、人為的に美しいものを作り出す加工もたくさんあり、今回の記事では美しい色をした琥珀を見ていきます。
ブルー&レッドカラー
美しいブルーカラーのアンバーです。ポーランド産、琥珀の産地で有名なバルト海沿岸で採れるいわゆる「バルティックアンバー」です。天然琥珀に色加工済みとの記載がありました。”アンバー” なのか ”コーパル” なのかはわかりません。今は染色技術が進んでいるようなので ”アンバー” なのかもしれません。(アンバーとコーパルについては前記事参照)
リトアニア染めと言われる伝統的な染色方法があるそうで、なんと植物を使った草木染めという話も他サイトですが読みました。「サファイアブルーアンバー」はリトアニアのその製法で作られたものを指すようです。
こちらはクラックが入ったもの。サンスパングルのアンバー2種です。クラックも熱処理によって作ることができます。(サンスパングルについても前記事参照)
今回の2種類の違いは、アンバー全体を染めているかいないかです。横からみるとわかりやすいです。
ルース裏側の状態:一見どちらも同じように見えますが、スパングルが多い方はよく見ると底面に彩色しているように見えます。
横から見た状態:横から見ると、スパングルが多い方は色が消えます。色のほとんどついていないアンバー(コーパル)にスパングルを作り、底面に色を施すことで色が写り込むようになっています。
全体を染めるとサンスパングルのゴールドの煌めきが埋もれてしまいますが、底面だけであれば金色がそのまま輝いています。どちらがいいかはお好みですね。
真っ赤なアンバーです。同じくポーランド産。「ルビーレッドアンバー」という名前は、サファイアブルーアンバーと同じでリトアニアの染色製法のもの由来のようです。
2024.7 追記
サファイアブルーとルビーレッドのアンバーについて見つけました。「AMBER BY MAZUKNA」というリトアニアの琥珀工房です。なんと楽天市場に出店していました。
以前どこかで見た通り、加熱加圧処理と染色によって三つの色を作り出している! ブルーとレッドは比較的わかりやすいですが、カリビアングリーンに関しては複雑な状況です。
> https://www.amberbymazukna.com/sapphire-and-ruby-amber/(公式Webサイト)
グリーンカラー
こちらのグリーンカラーもブルーカラーと同じく、クラック入りの2種類。産地も同じくポーランド産のバルティックアンバーです。
ブルーよりもさらに色合いが違いますね。サンスパングルのゴールドを引き立てるため、背面のカラーを濃いめにしている気がします。
カリビアングリーンアンバー
2024.7 追記
ペリドットのような明るいグリーンの琥珀が、あちこちで「カリビアングリーンアンバー」と表示されているのを見ます。
本来は、加熱加圧加工によって明るいイエローグリーンにしたものを「カリビアングリーンアンバー」と呼ぶのではないかと思うのですが、現状いろんな加工したものが混在していて、鮮やかなグリーンのものは全部 "カリビアングリーン" になってしまっているようです。
コロンビア産グリーンアンバー
コロンビア産のグリーンアンバー。”琥珀の王妃” と呼ばれることも。染色加工ではなく加熱処理が施されたものです。明るく透明感のあるライムグリーンです。熱処理だけでもこ色味ですが、加熱加圧処理はさらに明るいグリーンになっています。
コロンビアはカリブ海に面していることから、明るいグリーンの琥珀= “カリビアングリーン” になったのでは?と思っています。
加圧加熱処理
下の画像は最近手に入れたブルーグリーンのアンバーです。バルト海産のバルティックアンバーですが、加熱加圧と色処理が施されていると明記されていました。透明感があってイエローからブルーへのグラデーションが綺麗です。
GIA*1のサイトでも、
鮮やかなグリーンの琥珀は、加工処理された素材です。
「グリーンの琥珀」の鮮やかな黄緑色は熱と圧力処理の結果です。 最終的な製品は、それに応じて評価されています。
とあります。今回入手したブルーグリーンのアンバーも、商品の注意点として以下のように記載がありました。
加圧加熱処理が施されたアンバーです。現在、琥珀に関しては加工技術が進歩し、厚みの薄い原石に加熱と加圧を加えることで厚みのある形に修正し、その後加工する方法をとるのが一般的です。この方法を用いることで大きなサイズが作りやすくなることと、原石ロスを減らすことで安価での販売が可能となります。当店の知識のかぎりですと、近年、大粒で形状が揃っているものに関してはほとんどがこの方法を用いています。この手法を用いられたアンバーに関しては、宝石学会での統一見解がないので、鑑別士の方の個々の知識や解釈の差によって「琥珀」という鑑別書が発行されることもあれば、鑑別書の発行を断られるケースや「模造石」と判断されることもあります。
GIAのグリーンアンバーに関する文献*2を読むと、琥珀になる前のコーパルでさえ加工後は色のみならず、硬度さえ上がるとありましたので、その場合は「琥珀ではない」と判定されるでしょうが、素人目にはもうわかりませんね…
カリビアングリーンに関しては、染め、熱、圧力とどう処理されているのか見極めが難しいかもしれませんが、きちんとしたところであれば加工の記載があるはずです。染色は人工的に見えるので比較的わかりやすいと思います。
ブラックカラー、黒く見える琥珀
ブラックカラーのサンスパングル入りアンバー。ルース全体を黒く染めたらスパングルが消えてしまうことは想像できます。カボションカットの底面をブラックカラーで染めて上から見たときに黒く見えるようにしているアンバーです。
こうやって底面を金具パーツで覆ってしまえばわかりません笑。シックな黒とゴールドのピアスの出来上がりです。
アンバー(琥珀)は太古の樹脂が固まったものなので、由来を考えれば鮮やかな色になりえないんですよね。
自然そのものの美しさを楽しむ、人の手で作られた人工美を楽しむ、どちらもあって良いと思うのです。ただそれぞれの美しさに偽りの情報をつけて、見合わない値段で販売しないでほしいと願うばかりです…
*1:GIA:Gemological Institute Of America(ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ)略称GIAは、カリフォルニア州のカールスバッドに本校を構える世界的な宝石学教育機関と鑑別・鑑定機関、更に鑑定に関する研究を行っている研究所からなる組織。
*2:https://www.gia.edu/gems-gemology/fall-2009-green-amber-abduriyim